日本茶専門店 錦園石部商店 
titel 八十八夜を過ぎて。
やまかい
旧玉川村
2006年4月26日撮影
 初摘み、初取引、八十八夜と茶産地ならではの話題が続きました。八十八夜の茶を楽しんでいる方もいるころでしょう。錦園としても4月4日の初摘みに始まり、一ヵ月が過ぎました。多くの方達のお力を頂き、静岡のお茶を皆様に楽しんで頂けています。ありがとうございます。

 さて、お茶という飲料。浸出液で考えた時の理想型はどんなものでしょう。ちょっと意外に思われるかも知れませんが、もし完璧に出来たのならお茶は「香り、味ともに強く、艶のある無色透明に近い液体。」になるはずです。ポイントは、お茶の製造工程においての基本である恒率乾燥(茶葉表面に出て来る水と蒸散していく水がバランスした乾燥:「しとり」のある状態。)を行う事です。言葉にしてしまうと簡単ですが、一芽、一芽がそれぞれ違う茶葉でこれを行うというのはとても難しいのです。茶葉を製造中に破砕すれば水色(※お茶の浸出液の色のことを「水色(すいしょく)」と言います。)は出ます。つまり、「緑色」が欲しいのであれば蒸し時間を短くし、お茶を潰せばより緑色となります。※蒸し時間が長い深蒸し茶は本来「緑色」では無く「穏やかな黄緑色」になります。(一部の品種を除く。)水色を出す=「緑色のお茶にする。」というのは実は難しくありません。水色は、「出てしまうもの」です。蒸し製の煎茶においていかに水色の出ないお茶が出来るか。(※揉まずに作ればいいのではありません。)その難しさは一度でも製茶をご覧になった方なら分かるはずです。

 消費者が望むという言葉をタテに「水色優先」「新鮮香優先」「甘酸っぱい火香」を是とするお茶づくりが増えています。近年、お客様より耳にする「青いけれどお茶の味がしない。」「お茶ではなく、い草を飲んでいるようだ。」との言葉は「水色」「新鮮香」といったわかりやすい商品つくりをした結果によるものです。

香駿
旧玉川村
2006年4月26日撮影
 摘み採られた時の様子が分かる工芸作物としての「茶」と茶という植物の葉を原料とした「工業製品のような茶(茶使用食品)ボーダーラインの蒸し製の煎茶、粉末煎茶、ペーストなど」へ。目的にそって商品にするのは大切なことです。もちろん、工業製品的な「茶」を否定はしません。それもビジネス【business】です。(錦園も抗アレルギー効果が期待されている紅ふうきの粉末茶を販売しています。)

 ただ、まんぱちによる蒸し、手揉みに始まる針のような形状のお茶と同じ軸線上にあるお茶とは全く異なるものであることを、消費者の皆さんにも知って頂ければと願います。

 元の姿がわからない「食品」が増えています。茶畑の生葉を摘み、蒸し、揉んで乾かしたお茶でさえもこの流れの中にいます。これもまた時代なのでしょう。輝くような茶園。そこから生み出される艶やかな新芽。その姿、関わっている人達の思いを伝えたい。そして、出来るならその茶を通して「お茶以外の大切な何か」が心に残れば嬉しい。それこそが本当の目標です。

 ゴールデンウィークが終わればいよいよ山間地生産のお茶が始まります。例年に比べて約一週間から十日の遅れです。今年はどんなお茶になるのか。不安と期待の日々となることでしょう。

さくらかおり
俵峰
2006年4月9日撮影
 2006年05月4日 石部健太朗



良い道具による充実のティータイム


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