日本茶専門店 錦園石部商店 
titel 静岡伊勢丹にて 2006年新茶販売会
静かな波瀾を感じる新茶シーズン???
静岡伊勢丹にて
2006.04.22
 4月13日から伊勢丹地下にて「県内でもっとも早い露地新茶は静岡市産です。」と声を掛けさせていただいています。この言葉にウソはありませんが、新茶シーズン前に言われていた「今年は全体的に早い。」というのには訂正があります。丸子さわたりは「品種(極早生:杉山八重穂」「栽培方法(年1回摘採の自然仕立て)」「摘採方法(手摘み)」によって幸運にも早い生産が出来たのです。もちろん被害が無いわけでは無く、とても残念ですが寒さに当たってしまい摘み採ることが出来なくなってしまった新芽も沢山ありました。

本文とは関係ありませんが静岡某所の印雑系在来。この力強さは魅力です。

2006.04.10撮影

 新聞等でも語られ始めましたが「早い」といわれた今年の新茶は蓋を開けてみれば決して早いなんて事はなく遅いと言われた2005年同等、場所によってはさらに遅いくらいかも知れません。温かさで弛んだ芽が寒さでダメージを受け、早生系の品種は一気に後退し、中生の品種(やぶきた等)とほぼ同時期の摘採になってしまう山間地にはありがちなパターン。このため今年の生産は短期集中になるのは、ほぼ確実でしょう。

 新茶時期の大きな寒暖差は歓迎出来るものではありません。萌芽から摘採可能となるまでの日数が長いというのは芽は小さいまま硬化が進むことになり、待てども芽が大きくならないと言う事にも?(※近年では2003年がそうでした。)このような年は荒茶なのに火香を感じる欠点茶が増えそうです。(※心水が抜け難く、仕上げがしにくいお茶になります。)


 それはそれとして、今シーズンで感じるのはお客様が「え?もう新茶」と感じている期間が長い事です。いつもなら静岡茶市場の初取引の声とともに「新茶の季節ですね。」との声が聞かれるのにそれが無い。初夏の味覚のイメージがある新茶の雰囲気にはちょっと気温が低いのかも知れません。


さらに別の場所にて静岡某所の印雑系在来。お茶に見えないかも知れませんがれっきとしたお茶の樹です。

2006.04.10撮影

 以上のことから、あんまり芳しく無い新茶シーズンなのかといえば、強ちそんな事も無く、お客様から聞かれた嬉しい言葉も多い年になっています。少しご紹介させて頂くと
  • 「初めて新茶らしい味わいのお茶を飲みました。」

  • 「懐かしい味です。昔飲んだ新茶に似ています。」

  • 「あれ?走りなのにちゃんと味がします。」

  • 「形のあるお茶で嬉しい。」などなど。

 お茶は農作物であり、毎年、毎年出来は違います。自然仕立ての年一作の園ですらそうなのですから、畝仕立ての茶園なら尚更の事。その年々の生葉にあわせて生産者は適切な製造をし、専門店はそのお茶にあわせた楽しみ方を提案していく。そして、その先にお客さまの喜びがある。当たり前といえば実に当たり前。そして、シンプルな事です。

 2006年04月22日 石部健太朗




良い道具による充実のティータイム


(c)2000-2005 Nishikien. ALL RIGHTS RESERVED.